(要旨)

●リレーションシップバンキングの「報告書」では、中小・地域金融機関は「コミットメントコストを負担する宿命にある」とされているが、金融機関と地域の中小企業の双方で「コミットメント関係」を維持していくためのコストを負担し合っていくべきだという理解が大切だ。

●「コミット」とは、「自分が将来とる行動を表明し、それを確実に実行するということを約束すること」であり、「他に良い利益を与えてくれる相手に簡単に乗り換えるのではなく、その他の相手から得られる利益を犠牲にしてもこれまでの相手との関係を続ける」ことを「コミットメント関係」にあるという。これは、売買などの取引に伴う不確実性を低下させ「取引コスト」を節約させる利益をもたらすが、もう一方では、「別の行動に乗り換えたら得られるはずの余分の利益」を失うという意味での「機会コスト」を生み出す。「コミットメント関係」とは、「取引コスト」を低減させることを目的として、互いに「機会コスト」に対する対価を支払いつつ維持している関係であり、中小・地域金融機関と地域の中小企業も、まさにこの関係にあると考えることができる。

●「機会コスト」が大きくなれば、市場運用を増やすなど「別の行動」に乗り換え、地域との「コミットメント関係」を緩めるほうが有利になるともいえるが、今日の「機会コスト」増大の主因が、「これまでの相手(地域)」からの利益の減少にあるとすれば、地域向け貸出からの利益を回復させるために、適正な対価の負担を求めたり、創業支援など新たな付加価値を提供し貸出を拡大して収益を得たり、経営改善支援を通じた企業再生によって「取引コスト」の再削減を図るように努めるべきだという結論になろう。

●「リレーションシップバンキングの機能強化」に当たっては、そうした理解を中小企業・地域にも求めつつ、互いに「コミットメント関係」にあることの価値を再確認し、共同して、企業再生、地域再生に努力していくことが求められているといえよう。

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