政府による資産査定の厳格化の動向

−主要行に要請される要管理先大口債務者へのDCF法適用−

 

 

キーワード:DCF法、将来キャッシュ・フロー見積り、要管理先債権、大口債務者、最善の予測、1年基準・3年基準

 


1.資産査定の厳格化を求める金融庁〜主要行へDCF法の部分適用を要請

  金融庁は資産査定の厳格化の目玉として、2003年3月期の決算から、主要行の要管理先および破綻懸念先の大口債務者(当面、与信額100億円以上)に対するディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)の導入を要請している。将来キャッシュ・フローの見積りは合理的な最善の予測でなければならず、その前提、仮定、シナリオの合理性と合わせ、毎期の見直しが求められる。割引率は債権発生当初の約定利子率等であり、見積りの減少分が引当増加額を左右する。また、DCF法による引当額については、従来からの方法による引当額との比較検証も求められる。

2.公認会計士協会は将来キャッシュ・フローの見積りに厳しいルールを設定

  日本公認会計士協会は、DCF法で貸倒引当金を算定した場合の監査上の留意事項をまとめた。主要行の要管理先債権のうち、大口の貸出条件緩和債権についてはDCF法の適用が必須となろう。将来キャッシュ・フローの合理的に見積り可能な期間は原則5年で、見積りは再建計画等に基づいて合理的で、不確実性を反映して調整された慎重なものでなければならない。

3.DCF法の導入による貸倒引当金増額が不良債権処理進展の契機に

  DCF法の導入により、主要行の要管理先大口債務者に対する引当率は大幅に上昇すると予想される。これにより実質簿価(債権額−貸倒引当額)は低下し、主要行はそれら企業向け債権を産業再生機構やRCC、投資ファンドへ売却しやすくなり、それら企業の再生も進もう。主要行は2003年3月期での一層の不良債権処理と保有株式の評価損に備え、増資等の資本増強策を打ち出している。DCF法の導入は、これまでの不動産担保融資がバブル崩壊により行き詰まった結果である。大企業向け金融は、プロジェクト貸付や債権証券化の活発化を通じて、より事業キャッシュ・フローを重視する市場指向の金融に傾斜していこう。

 

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