<要旨>

 

人民元の切り上げと日本経済・企業への影響

 

〜当面、中国は変動幅の拡大と資本取引規制の緩和などで対応〜

 

視点

中国経済は世界経済に対する影響力を強めてきており、中国が為替制度の面でも市場原理を導入し、世界経済との一体化を進める必要性が高まっている。同時に、為替制度の改革は、中長期的にみれば、中国経済にとってもメリットがあると考えられる。日本の中小企業の多くが中国ビジネスに携わっている現在、人民元が切り上げられた場合の貿易・投資などに与える影響を分析しておくことは重要と思われる。そこで、本論では@人民元の切り上げに必然性はあるのか、A人民元を切り上げるとすれば、どの程度が適切なのか、B仮に人民元が切り上げられた場合、日本経済や企業にどのような影響があるのか、について考察し、最後に中小企業などにとって、どのような対応策があるのかを考えてみた。

 

要旨

  米国政府の為替政策は緩やかなドル高是正に傾いており、今後も中国政府に対して継続的に人民元の切り上げを求めていく可能性が強い。

  人民元の切り上げは、世界的なデフレ圧力を緩和する役割を果たすと同時に、中国経済にとっても過剰流動性の抑制、国民貯蓄の有効活用などのメリットがある。

  中国政府にとって現実的な選択肢は人民元相場の変動幅を徐々に拡大することであり、資本取引を自由化し、完全フロート制へ移行するまでには国内金融制度の整備などが必要である。

  当面、人民元の切り上げが小幅にとどまるならば、日本の貿易には大きな影響をもたらさないが、対中投資は若干伸びが鈍り、産業の空洞化に一定の歯止めがかかる可能性がある。

  日本企業への影響は、中国ビジネスの形態によってプラス、マイナスの両面が考えられる。当面、中国製品を輸入する国内企業は、人民元に連動すると予想される香港ドル資産を保有し、為替リスクを軽減する方法も考えられる。また、中国に進出している日系企業は人民元建て負債の圧縮を検討する必要がある。

 

キーワード

  人民元、実質実効レート、為替制度、購買力平価、資本取引自由化

 

 

全文を見る