要旨

ドイツ経済低迷の背景と日本との類似点

−日独とも労働市場の弾力化とサービス産業の強化が課題−

 

(キーワード)労働市場の硬直化、安定成長協定、東西統一、通貨統合、構造改革、サービス化

 


視点

ドイツは、日本と同様に製造業の育成・技術革新を通じて急速な復興・発展を遂げたが、現在は、低成長、高失業率、財政赤字に喘ぎ、デフレ懸念も強まっている。ドイツ経済低迷の背景を分析し、日米との比較を行うことで、日本の構造改革への示唆が得られると考えた。

一方、運用難に悩む日本の金融機関にとって、外貨建て金融資産への投資の重要性が高まっており、家計も外貨預金や外債投資のウエイトを高めている。その際、貿易・財政の双子の赤字を抱える米国よりもユーロ圏の方が投資対象として適当だとみる向きもあるが、ユーロ圏経済の3分の1を占めるドイツ経済の低迷が長期化するようであれば、ユーロの地盤が沈下する事態も招きかねない。ドイツ経済の構造問題の分析を通じ、ユーロのリスクについても考察したい。

 

要旨

l         ドイツは、社会福祉国家の色合いが濃く、労働組合の力も強い。これが労働市場の硬直化を招き、失業の増加と長期化をもたらしている。さらに、財政赤字の拡大要因にもなっている。

l         賃金コストの高さや解雇の難しさを背景に、生産拠点が東欧など低賃金の近隣地域へシフトし、日本と同様にドイツにおいても製造業の空洞化と国内の雇用環境の悪化が生じている。

l         旧東ドイツ地域への経済支援が財政赤字拡大の一因となっているが、東西ドイツの経済格差は依然大きく、今後もドイツ経済全体を圧迫しよう。

l         ユーロ圏のインフレ格差は大きい。ECBの金融政策は平均インフレ率により決定されることから、低インフレのドイツの実質金利は高止まり、景気低迷の一因となっている。

l         労働市場の硬直性、東西ドイツの統一コスト、実質金利の高さなどから、ドイツ経済の低迷は長期化する公算が大きい。経済のファンダメンタルズの比較で、ユーロがドルより良好とは言い難い。ただ、日本と違って、銀行の金融仲介が機能不全には陥っていないことから、デフレ突入は回避されよう。

l         ドイツ政府は、失業給付期間の短縮による就業意欲の喚起や小売業に対する規制緩和など構造改革に着手し始めた。その内容は一定の評価はできるが、残された課題は依然として多い。特に、米国との比較で、ドイツと日本が立ち遅れているのは、経済のサービス化である。規制緩和によるサービス産業の育成が日独両国にとって喫緊の課題といえよう。

 

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