要旨

家計貯蓄率低下の背景と中期的な展望

−高齢化の進行を背景に低下傾向ながら、国全体では貯蓄超過が続く−

             (キーワード)貯蓄率、可処分所得、帰属家賃、高齢化、貯蓄投資バランス

 

1.家計貯蓄率は急低下し、米国に接近〜定額郵貯の満期集中が貯蓄率低下の一因

日本の家計貯蓄率は、91年(14.6%)をピークに2001年には6.9%まで急低下し、過少貯蓄が問題視されている米国の水準(2001年は2.3%)に接近した。貯蓄率低下の背景には、所得の減少、高齢化の進行に加えて、2000〜01年においては高金利の定額郵貯の満期が集中したことも影響している。定額郵貯の受取利子は毎期の財産所得・貯蓄に両建て計上される一方、満期時には10年分の受取利子の20%が税金として源泉徴収され、貯蓄残高が減少するためである。郵貯利子に課される税金増の影響で、2001年の家計貯蓄率は1%程度押し下げられた。

2.消費の慣性効果(ラチェット効果)も貯蓄率を引き下げ〜基礎的支出の抑制には限界

消費支出には食費・光熱費など基礎的な支出も多く、収入の減少ほどには消費を抑制しにくい傾向がある。消費の慣性効果(ラチェット効果)と呼ばれ、これが最近の貯蓄率低下に影響している。また、家計の収入の内訳をみると、金利収入の大幅減少が目立つが、金融資産の多い一部の家計を除けば、金利収入、特に複利運用される金融商品の利息については、消費水準を決定する際の所得としてさほど意識されていないと考えられる。実際、家計の消費支出の増減は、金利収入など財産所得を除いた家計所得の動きとの相関度が高い。

3.高齢化の進行が家計貯蓄率の低下要因となるが、国全体では貯蓄超過が続く

年齢階級別の貯蓄率(家計調査)をみると、30歳代、40歳代の世帯では引き続き高貯蓄率を維持しているが、年金世帯の貯蓄率はマイナスで推移している。65歳以上人口比率が1%高まれば、家計貯蓄率は0.4%程度低下すると試算され、高齢化の進行は今後も家計貯蓄率の低下要因となろう。一方、企業は、賃金の支払いと設備投資を抑制し、債務返済(貯蓄)に努めており、家計と企業を合わせた大幅な貯蓄超過(資金余剰)傾向に変化はない。過剰債務の圧縮が進めば、企業は投資を拡大しようが、その場合には税収増で財政赤字(政府の投資超過幅)が縮小する。5年程度の中期でみれば、国全体での貯蓄超過(経常収支の黒字)は持続しよう。

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