164号 NYにおける地域開発
-変貌を遂げつつあるハーレム地区(その2)-
 

 16-2号では、ハーレムの商業地区の変貌についてお伝えしましたが、本号ではハーレムの住宅開発についてお伝えします。


ハーレム地区の新しい住宅
(シャバズ・ガーデンズ)

1.ハーレムの住宅開発の経緯

 1970年代までのハーレムでは、住民による保険金目当ての放火等も頻発し、焼け残ったビルの残骸が多く残る犯罪多発地帯だったようです。しかしながら、現在では写真にあるような新しい住宅建設プロジェクトも進められています。 

2.米国における住宅開発

(1) 非営利団体の活躍 
 
米国での、特にハーレムのような都市の再生の中心となるのは、地元の非営利団体であり、政府は裏方として非営利団体をサポートしています。一般的に言うと、下図のような関係となります。

(米国における一般的な中・低所得者向け住宅開発の仕組みのイメージ)

 
 地元の非営利団体が連邦や州・市政府から補助金等を得て、銀行から資金調達を行い、開発業者を選定して開発し、完成した住宅のマーケティング活動(住民募集)まで行うこともあります。プロジェクト用地は、非営利団体が市などの地方自治体からから低価格で譲り受けることもよくあります。国や自治体などによる上からの開発と比較すると、非営利団体が中心となることにより、無駄な税金支出を抑えられる、地元の意見が反映されやすいため、その地区に合致した開発が可能となる、などのメリットがあります。
 こうした住宅開発は、中所得者に対する低価格住宅の販売だけでなく、低所得者に対する住居提供も目的としており、例えば、新しい住宅に低所得者を住まわせた場合、連邦政府が家賃の一部を家主に対して支払うという制度もあります。

(2) 銀行の役割
 銀行の役割は非営利団体に対して投融資を行うことです。アメリカの銀行には、地域再投資法(CRA)という規制があり、中・低所得者向け住宅開発などの、地元の開発に貢献するプロジェクトに投融資を行うと、CRAクレジットと呼ばれる一種のポイントを得られます。監督当局によるCRA検査で、このCRAポイントが不十分だと、その銀行はその後の支店開設や合併・買収などによる拡大の認可が監督当局から得られなくなる懸念があるため、成長志向の銀行はこうした地域貢献・開発活動にも熱心です。
 
 このように、アメリカの地域開発の特徴は、地元中心、官民の協業、銀行に対する飴と鞭、の巧妙なバランスで出来上がっていると言えます。


(文責:ニューヨーク駐在シニアアナリスト 青木 武) 

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取材協力:
 ニューヨーク連邦準備銀行
 エンパイヤ・ステイト・ビジネス開発コーポレーション
 ニューヨーク大学 
行政研究所 青山公三氏ほか
参考文献:
 日本政策投資銀行、「
IT等を軸にした地域活性化策とハーレムの変身」、2000年9月
 住宅都市開発省ウェブサイト(http://www.hud.gov

(文中意見にわたる部分は筆者の個人的意見であり、必ずしも信金中央金庫の見解を反映させたものではありません。本レポートは、掲載時点における情報提供を目的としています。したがって施策実施・投資等についてはご自身の判断によってください。また、本稿は、執筆者が信頼できると考える各種データ等に基づき作成していますが、当研究所が正確性および完全性を保証するものではありません。なお、記述されている予測または執筆者の見解は、予告なしに変更することがありますのでご注意ください。