(第16−3号 アメリカの中小企業向け貸付(SBA保証制度))
1.SBAとは?
 SBAはSmall Business Administration:中小企業庁という連邦政府の機関です。 SBAの主要な役割は、中小企業の支援をすることです。具体的には、中小企業が銀行などから資金を借りる際に、保証をすることにより、銀行等から借り入れをしやすくする保証制度が中心です。

2.保証制度の概要(主に7(a)保証制度)
 保証する、ということは、中小企業が銀行等から資金を借りて、万一返せなかった場合に、SBAが中小企業の代わりに銀行に返済してくれる、ということです。その代わり、資金を借りる中小企業は、SBAに対して保証料(制度や金額によって異なりますが、2%前後)を支払います。もっとも、SBAが借りたお金を全額保証するわけではなく、制度によって異なりますが、原則として85%〜75%を保証します。SBAの保証により、銀行にとってはリスクを大きく軽減できるため、中小企業融資に積極的に取り組めることになり、中小企業から見ると資金を銀行から借りやすくなります。特に、設立後間もない企業は銀行からお金を借りることは通常は容易ではありませんが、このSBAの保証が付けば借りられることも多くあります。
 もちろん、中小企業からみて、保証があるから借りた資金は返さなくてもよい、というわけにはいきません。SBAの保証を受けるためには、担保を提供し、原則20%以上のオーナーは個人保証をしなければなりません。例えば、1,000万円分借りた資金が返せなくなった場合、まず担保を売却し、そしてオーナーは個人保証を履行し、それでも足りない部分が仮に200万円分だとすると、その約80%(160万円分)をSBAが銀行に払ってくれる、という制度です。(つまり銀行の損は40万円分)

SBAには中小企業をサポートする様々な制度があります。

3.ベンチャー起業支援
 現在、アメリカビジネス界の中心で活躍している、インテル、アップル・コンピュータ、フェデックスなども、設立当時はSBAの制度を使い、大きくなりました。SBAには、7(a)制度等の中小企業への保証制度だけでなく、こうしたベンチャー起業を支援する制度もあります。具体的には、例えば民間の投資会社に対してSBAが保証することにより資金調達を容易にさせ、その投資会社が未来のインテルやフェデックス候補となるベンチャー企業に投融資を行う制度があります。
 このほか、SBAは、各地の大学や地方公共団体と提携してビジネス開発センターを各地の大学などに設置しています。例えば、料理が得意なのでレストランを開きたいのだが、ビジネスプラン(事業計画)の作り方や、銀行などからの資金調達の方法がわからない、という人には、そうしたノウハウをそこで原則無料で提供しています。つまり、ベンチャー起業、というほど最先端のものでなくても、普通のビジネスを新たに始めたい人々へのノウハウ支援も行っています。さらに、成功した起業家などがボランティアとして若い起業家の先生となり、指導してくれるSCORE制度もあります。つまり、米国で起業したければまず地元のSBA事務所等に相談に行く、というのが基本となっています。

4.官民の役割分担と最近の動向
 このように、「官」であるSBAは、民間の金融機関と競合するのではなく、民間ではできないような仕事をしています。アメリカのSBAでは、実際に貸付をするのは民間の銀行、保証や無料での技術提供などをするのがSBAと、役割分担をすることにより、官民の連携がうまくとれています。
 しかも、SBAは銀行側のニーズにも敏感です。現在では、銀行側の情報技術の発達により、クレジットスコアリングといって貸付の審査をコンピュータを利用してすばやく行う動きが大きな銀行を中心に広まっています。このため、SBAでも、基本的な貸付の審査や担保などの方針は銀行にまかせるが、保証は50%までしかしないというエクスプレス制度を導入しており、現在では、利用されているSBA保証制度のうちのかなりの部分はこのエクスプレス制度となっています。

(文責: NY駐在 Senior Analyst 青木 武)

取材協力:
 中小企業庁(SBA)ニューヨーク事務所
 エンパイヤ・ステイト・ビジネス開発コーポレーション
 

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